山々に囲まれた歴史ある街・上田を訪れたヨシノ。
東京での日々に苦しさを感じた彼女がこの街に来た目的は、ゲストハウスでありながら同時に劇場であり、カフェでもあるこの街の特別な拠点「犀の角」を訪ね“休憩”することであった。
かつてこの上田には深い深い海があった。数年前、8メートルものクジラの化石が発見されたこの街を歩きながら、ヨシノは不思議な出来事に次々と巻き込まれていく。
今が現実なのか、夢なのか、過去か未来かも曖昧な時間の中で、ヨシノの“休憩”は予想もしないものになっていって……。
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加藤紗希と豊島晴香のユニット「点と」による初長編作『距ててて』は、2022年の公開後に口コミで広がり、国内外で評価された。『わたのはらぞこ』は、2人の長編第2作。長野県上田市の人々と共生の取り組み、歴史等に刺激され、同地で撮影した映画だ。
主演の神田朱未をはじめ、キャストは『距ててて』の俳優陣が引き続き出演。また三浦康嗣(□□□)が映画音楽を初めて制作、音響デザインも担う。
神田の繊細な演技と俳優陣のアンサンブル、軽妙で奥深い物語、新鮮な「音楽劇」的サウンド、上田の風景が織り成す無二の映画体験がここに。





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神田朱未(ヨシノ役)
俳優・声優。幼少期に母に連れられ見た映画や舞台に憧れて、高校演劇を経て上京。
その後、声優としてアニメや外国映画の吹替を担当し、ラジオパーソナリティとしても活動。
2017年、映像・舞台演技を学ぶため、映画美学校アクターズ・コースに入学。
近年の出演作にドラマ『0.5の男』、映画『Polar Night』、玉田企画の舞台『バカンス』、アニメ『BLEACH』など。 -
加藤紗希(監督/ばんちゃん役)
振付師・俳優。幼少期よりダンスを始め、中学生でミュージカルを経験。舞台製作・振付・出演などを経て、映画美学校アクターズ・コースを修了し、「点と」にて映画製作を開始。
近年の出演作に『命の満ち欠け』『あずきと雨』『Good Luck』、振付作に『よだかの片想い』「コープアニバーサリービデオ」など。 -
豊島晴香(脚本/半田役)
俳優。大学卒業後、旅行会社勤務を経て演劇の世界に足を踏み入れる。普段は舞台を中心に活動しているが、映画美学校アクターズ・コースで出会った加藤紗希の声がけにより脚本を書き始め、「点と」として共に映画をつくるようになった。
近年の出演作にウンゲツィーファ『8hのメビウス』『湿ったインテリア』、ムニ『ことばにない』など。ごはんが好きだがお腹が弱い。 -
釜口恵太(岸役)
鹿児島県出身。最近は健康のことについて考えることが多く、食や睡眠、メンタルヘルス、腸内細菌に関心がある。山登りを趣味にしたいと思っている。屋久島の縄文杉を見るのが当面の目標。映画や演劇を通してたくさんの人に出会いたい。
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本荘澪(ヤン役)
兵庫県出身。映画美学校でお芝居を始める。東京に住み始めてもう少しで10年になる。幼く見られることが多いので、年相応に見られたい。現在は服作り中。
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湯川紋子(トワコ役)
東京都出身。俳優。広告を中心に活動していたが、演技をもっと学びたくて映画美学校アクターズ・コースに入り、そこで『わたのはらぞこ』のメンバーと出会う。料理や園芸など手を動かすことが好き。カラスミも手作りする。
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髙羽快(みつめ役)
俳優・写真家。映画美学校アクターズ・コース7期への入学を機に俳優活動を開始。同時期に写真も始める。どっちも辞めたくない。映画:『泥濘む』『距ててて』出演。舞台:東葛スポーツ『12時17分、土浦行き』出演など。写真はインスタ@fishpastecakeまでお願いします。
三浦康嗣(音楽・音響デザイン・作詞)
音楽家。□□□主宰。□□□としての活動以外にも歌手などのプロデュースや楽曲提供、映像/舞台/メディアアート/インスタレーションなど色んな形で音楽を制作。
プロデュース/楽曲提供/リミックス/トリビュート:木村カエラ、ヒプノシスマイク、ドレスコーズ、平井堅、m-flo、私立恵比寿中学、細野晴臣など。
2映像/舞台/インスタレーション作品:第54回岸田戯曲賞受賞『わが星』、森山未來のドイツ公演の音楽、F/T13でのフラッショモブ監修、第60回カンヌ国際広告祭銀賞受賞『TOKYO CITY SYMPHONY」、第15回文化庁メディア芸術祭エンターテインメント部門大賞受賞『SPACE BALLOON PROJECT」、Hermes、Franck Muller、東京大学など。
点と
振付師/俳優の加藤紗希(写真左)と俳優の豊島晴香(写真右)による創作ユニット。映画制作とワークショップ企画を主な活動とする。2019年、初めて製作した短編映画『泥濘む』がぴあフィルムフェスティバル/PFFに入選。2021年、初長編映画『距ててて』がPFF観客賞を受賞し、2022年には全国9館にて劇場公開。国際交流基金「JFF+ INDEPENDENT CINEMA」にて世界各国にも配信された。
『週刊文春CINEMA』2022年夏号において「期待の監督5人」にユニットとして選出。
本作『わたのはらぞこ』は2本目の長編である。
- 上田映劇|2025年8月1日(金)〜9月28日(日)|長野県
- ポレポレ東中野|2025年8月23日(土)〜9月19日(金)|東京都
- 大阪アジアン映画祭|2025年8月〜9月|大阪府
- シネ・ヌーヴォ|2025年9月20日(土)〜10月3日(金)|大阪府
- 出町座|2025年10月17日(金)〜10月30日(木)|京都府
- 元町映画館|2025年10月18日(土)〜10月24日(金)|兵庫県
- Kuramoto|2025年10月6日(月)〜10月30 日(木)|福島県
- シネマスコーレ|2025年11月8日(土)〜11月14日(金)|愛知県
- 横川シネマ|2025年11月8日(土)〜11月14日(金)|広島県
- 豊岡劇場|2025年11月14日(金)〜11月26日(水)|兵庫県
- シネマ・チュプキ・タバタ|2025年11月15日(土)〜11月28 日(金)|東京都
- 御成座|2025年11月22日(土)〜11月30日(日)|秋田県
- うえだ城下町映画祭|2025年11月23日(日)|長野県
- OttO|2025年12月5日(金)〜12月9日(火)|埼玉県






チラシのハートウォーミングさを裏切る、ハードボイルドなリアクション映画でした。
人の「出し入れ」を見ているだけでスリリング。甘えを許さないのに妙に礼儀正しい人々がヒロインを振り回し、なぜか最後は、地層と声と映画の呼吸だけで回復の奇跡をもたらす。あらゆる場面で映画自体がグラグラと危うい綱渡りをしているのだけれど、常に正しい側に落ちて来るのが気持ちよかったです。編集うまいなぁ。
吉田喜重『水で書かれた物語』に最接近するクライマックスも感動的。
大工原正樹(映画監督)
この世ならぬものへの感覚が素晴らしいのである。
冒頭の風の描写をダリオ・アルジェントが見たら、『フェノミナ』の風はこのように吹かせたかったんだあ!と嫉妬するに違いない。中でも亡霊(としか思えぬ)のような女が味噌汁の匂いを嗅ぐショットは白眉である。
ここはかつて海の底だった街。『日本沈没』で列島すべてを海の底に引き摺り込んだあのフォッサマグナの地である。川に寝そべっていた女(おそらくは河童の類)がその来歴を語り、やがてフォッサマグナの断層が映し出される時、この映画は狂気の頂点へと向かう。この狂気が都会からやって来た危うい精神のヒロインを救うのである。ヒロインは亡霊のような女に向かって言う。「休憩するために来たのにもうヘトヘトです!」。
実に感動的な治癒の表現である。
高橋洋(脚本家・映画監督)
川底に眠るクジラの化石が、太古の海を街に滲ませる。
疲れ果てた女性が、ゆっくりと呼吸を取り戻していく。
言葉を失くした人たちへ。
この映画で、あなたの言葉が脈打ち始めるかもしれない。
九龍ジョー(編集者)
“音階のドとソは遠いのか”
誰にも答えの出せない曖昧な問いを、それでも自分自身の声で測ろうとする。なにか奏でようと試みる。
そんな人々こそ思いがけず“未踏の地層”に触れうる瞬間があることを、この映画はゆるやかに証明する。
シャガールの描く祝祭のような最後の景色は、観客の記憶にきっと深く残りつづける。
小池水音(小説家)
すばらしかったです!
上田の街への憧れがますます強くなりました。
鑑賞後に思い浮かぶスクリーンに映された上田の地層や風景の中に、映画では多く語られなかった登場人物一人一人の人生が重ねられているように感じました。
主演の神田朱未さんが素晴らしかったです。
声はもちろん、眼差しも少し猫背気味な佇まいも。
随所に豊島晴香さんの脚本の強さや監督の加藤紗希さんの愛、「点と」チームのリサーチ力と確かな職人技を感じました。季節を彩る三浦康嗣さんの音楽もとてもよかったです。重なるレイヤーもまた、地層ですね。
端田新菜(俳優)
脳内に結びきらぬ像を抱えたままも、それぞれのシーンを笑いながら見ていたら、
クライマックスでは、謎の感動に胸が締め付けられると同時に高鳴り、走り出したい気持ちになった!
なんなんだコレは!?
ドラマ的な「線」をなぞって単純化しない、大らかで豊かでカラフルな混沌。
線路も川も、自然も人工物も、今を生きる人も風景も、記憶という過去も……
そこにあるけど見えないものまでが同列に「点と」して映る『ガチャガチャ』した祝祭的傑作!
酒井善三(自主映画監督)
いろんな日が積み重なった上に今日があり、今日の中には過去も未来も含まれている。誰かが通った後に道があり、その道を進む人の中には自分と誰かが含まれている。
動かなくなったこころがまた少しずつ動き出すとき、未来に向けて船を漕ぎ進めるのではないかもしれない。過去と未来が混ざり合い、自分と誰かが混ざり合い、行き来する波が運んでくれるのかもしれない。
右肩上がりの成長ではない、時間をかけて層を重ねる日々に思いを馳せた。
桜林直子(雑談の人)
映画は実は罪深いものである。信じなくてもいい嘘を信じさせたり、見えないものを見る力を奪ったりする。しかし『わたのはらぞこ』は、何も命令しない。信じても信じなくてもいいよ、と言いながらカセキも、キセキも、ウチワも、仏頂面も、ガチャガチャもあらゆるものを肯定し、見えないものを出現させ、人々を繋ぎ、世界を称え、息づかせる。映画の上映が終わった後、戻ってくる私の現実は以前よりも少し「信じられる」ものになっているはずだ。
諏訪敦彦(映画監督)
人が途方に暮れそうな時
その人がふと足を踏み入れてしまえる場があったり、ただ声をかける人がいることはとても大切
つながりの可能性がない場と、その可能性がほんのちょっとだけでも開かれている場では、紡がれる物語が大きく変わる
どこかの街で描かれる少し不思議なリカバリーの話
たくさんの音やリリックとともに
星野概念(精神科医 など)
嫌な絵が1秒も無い、逆アウトレイジでした。
上田市に積もったやさしさを、そっと掘り出して見せてくれているかの様な、美しく親しみやすい映像。印象的な音と音楽。
不思議が段々ほどけてくる、やさしい物語。
ちょっと疲れてる全ての人に観てほしい映画です。
出井隼之介(ヤーレンズ)
最近は「よめる人」が増えてきた様に思う。
“理解ができない”言葉は上手く説明できなかった恥ずかしい事であるみたいなそんな風潮。
けど「よめない人」は今目線を上げた先の世界のそこかしこに意外といる。
その人達は、多くの人が気に留めていないなにかにそわそわして、不意に納得して喜び、何気ない行動の中で、怒ったり喜んだりしている。
言葉で言い切らない、日常に点在する隙間はある時にふと人生でリフレインしたりする。
そういう隙間がある人生が私はとても好き。
中村佳穂(音楽家)
『距ててて』を作り出したあの「点と」の二人が、三浦康嗣の音像と鳥や水のささやきと歌を得て、硬直した私たちの体を共振させ、こころを共鳴させる。
いとうせいこう(作家・クリエイター)